もう一度読み返したい本:ラバー・ソウル
以前書店でみかけた文庫本、すごくおすすめしてあって次に見かけた時に買おうと思っていたのですが、なんだか今日は凄く気になってしまって仕事帰りに買ってきました。
早見和真の【イノセントデイズ】
最初に見かけた書店では「ラストを知ってしまうと読む意味が全く無くなる」とポップが。
本日寄った書店では、「読んだ後にショックで三日間呆然とした」と。
帰りの電車の中で少し読みました。
私自身結構ミステリーやサスペンス小説が好きなので、最後まで読み終えるのが楽しみですね。
読み終わったらまた感想を書きたいと思います。
タイトルにもある通り、一回読んだ後にもう一度読み直したくなる、そう思わせる作品となっています。
ネタバレはせず、読んでみたいと思っていただけるようなお話ができればと思います。
この作品、手元にある文庫版をめくってみると、
本編終了までに678ページあります。
見た目にもかなり分厚く、購入した際に果たして最後まで飽きずに読めるかと不安にもなりましたが、気がついてみれば一気にこの作品を読み終えていました。
それだけこの作品は、続きが気になって仕方ない!
幼い頃から友だちがいたことはなかった。
両親からも顔をそむけられていた。
36年間女性にも無縁だった。
何度も自殺を試みた。
そんな鈴木誠と社会の唯一の繋がりは、洋楽専門誌でのマニアをも
唸らせるビートルズ評論だった。
その撮影で、鈴木は美しきモデル、美縞絵里と出会う。
心が震える、衝撃のサスペンス。
お気付きの方も多いと思います。
ラバー・ソウルは、ビートルズが発表したアルバムタイトルでもあります。
各章のタイトルは、このラバー・ソウル収録曲となっています。
読んでいる間の違和感、読み終えた後の脱力感
脱力感という表現があっているかはわかりません。
ただ私自身は読み終えたあと、この物語の結末を理解し、どっと力が抜けました。
この作品、中盤あたりからどことなく違和感が漂い始めます。
何かがおかしいんです。
それは話の筋が通っていないとかそういった話ではなく、
この作品自体に違和感が出てきます。
その違和感の正体は、最後まで読まないと理解できないものです。
全てを読み終わった後に、感じていた違和感の正体に気づくのです。
そして、閉じた文庫本を、もう一度最初から読むことになるでしょう。
ストーカー鈴木誠の、狂気の行動の数々
ざっくり言うなれば、ラバー・ソウルは美縞絵里に恋をしたストーカー鈴木誠が狂気の行動に出るまでの経緯、その一部始終といったところでしょうか。
主人公鈴木誠は、とても醜い顔をしています。
その顔を見た人は、誰もが目を背けます。
それは、彼の実の両親でも同じです。
彼の父親は、息子を「人生で唯一の汚点」とまで言っています。
彼の気持ちになってみましょう。
誰もが自分から目を背け、誰も自分と関わろうとしなかった。
目を背けるどころか、罵声を浴びせられ、避けられ、道ゆく人は顔を見た途端「ぎゃ!」と逃げていくのです。
そのような自分の容姿を知っているから、自ら他人と関わろうともしなかった。
そんな自分から、逃げずに隣にいてくれた女性がいたとします。
(たとえそれが、どんな理由でも・・・)
恋とは言わずとも、惹かれてしまうのは当然のことではないでしょうか。
とは言っても人と関わってこなかった鈴木誠は、他人との接し方、それも異性への接し方などまるでわかりません。
それでも彼女に近づきたい、自分の存在を知ってもらいたい、その思いが彼を行動させましたが、結果的にそれは世間一般に言う「ストーカー」なのです。
必ず、二度目を読み始める作品
乾くるみのイニシエーション・ラブもそんなアオリがついていましたね笑
ラバー・ソウルも同じです。
この作品は、二度目を読み始めてしまう、その魅力があります。
感じていた違和感が解消され、結末を知った上でもう一度読み返すとまた違った見え方ができます。
正直私は感じていた違和感を「まあ、こんなこともあるかな?」程度に流していたのですが、真相がわかった時は「やられた!」といった感じでした。
同時に自分が感じていた違和感が間違いではなかった事も知らされたので、爽快感すらありましたね。
もちろん私も二回目をすぐ読み始めました。
1回目は勢いのまま読み進めていたので、2回目はじっくりと、「ここは、こういうことだったんだな」と色々と考えながら読み進めていきました。
ラバー・ソウル、おすすめです。